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シェール革命のインパクト『シェール革命と日本のエネルギー』

公開日: : 最終更新日:2014/04/04 エネルギー関連ニュース

お疲れ様です。
これからのエネルギー情勢はどうなっていくのでしょうか?
エネルギーを管理される方にとって、この情勢分析は非常に重要です。
但し、世界単位での政治・経済と関連するこの事項、予測はやっぱり難しい。
ただし、何かしらの仮設は持っておかないといけませんよね。

以下、WEDGE 4月1日(火)12時35分配信より

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140401-00010001-wedge-int&p=2

エネルギー資源大国として台頭しつつある米国
クリミア危機の裏側で、天然ガスをめぐるロシアとウクライナの確執がふたたび表面化している。

ロシアはこれまでにも豊富な資源を飴や鞭として利用し、周辺諸国に影響力を行使してきた。ウクライナに対しても、価格を割り引いたかと思えば、今回は巨額の料金を請求した。ウクライナ経由パイプラインのガス供給停止も、まだ記憶に新しい。

天然ガスの約3割をロシアに依存している欧州は、ロシア・ウクライナのガス紛争を教訓に、パイプラインのルートを分散化したり、ガス備蓄を増やしたりしてリスク分散を図ってきた。今回の報道を見ると、ウクライナ経由のガス輸入はかつての8割から6割程度に減らしてあったようだ。

じつは、こうした構図がいま、大きな転換期を迎えている。米国発の「シェール革命」によって世界のエネルギー地政学が様変わりする。そう予測するのが、本書である。

いうまでもなく、現在米国で起きている「シェール革命」は、「エネルギー分野における21世紀最大の技術革新」といわれるほど、インパクトの大きい“波”である。

「それは、インターネットをはじめとするIT技術が私たちの社会や生活を大きく変えたように、世界のエネルギー事情に大きなインパクトを及ぼしつつあります」と、著者は論じる。

まず、シェール革命は、化石燃料の資源枯渇論を後退させた。シェールガス、シェールオイルの腑存量は膨大で、これを開発すれば、石油の確認可採埋蔵量は従来の約40年から100年に、天然ガスは約60年から200年に伸びるという。

シェール層からガスや原油を安く開発できるようになったため、米国内では天然ガス価格が大幅に下がった。貿易赤字の大きな要因である石油輸入量が急減、米国はエネルギー資源大国として台頭しつつある。

米国で余った石炭は欧州市場へ ロシア産天然ガスからの転換
ここまでは、すでに耳にしている話であろう。本書ではさらに、米国で起きている状況が今後どれだけ続くのか、米国経済と社会はシェール革命によりどう変わりつつあるのか、世界経済やエネルギー情勢への影響はどこまで及ぶのかを具体的に解説する。

たとえば、米国では天然ガス価格の低下により、火力発電で石炭からガスへの転換が加速した。米国で余った石炭は欧州市場へ輸出され、欧州ではロシア産天然ガスから米国産石炭への転換が進んだ。

ガス火力の競争力向上で、原子力発電や再生可能エネルギーは人気に陰りが出ている。これらを開発せずとも、石炭から天然ガスへの燃料転換により温室効果ガスの排出量は半分近くに減少する。手っ取り早く、コストも安くすむというわけである。

こうした思惑から、オバマ大統領は2013年6月末、地球温暖化防止に向けて新たな行動計画を発表した。世界最大のCO2排出国である中国とも温暖化対策で連携することで合意した。

産業面では、安価なシェールガスの利用によって石油化学が復活し「石化ルネサンス」を迎えている。著者によると、米国の石油化学製品はすでにサウジアラビアなど中東諸国と競合できるレベルに達しており、メキシコ湾岸はエチレンプラントの新増設ラッシュに沸いているという。

自動車燃料のガス転換も著しい。今後、米国や中国といったシェールガス産出国では、輸送部門でも石油から天然ガスへの転換が進むだろうと、著者は予測する。
3E実現の切り札
<米国でみられるように、シェールガスを産出できる国は、エネルギー安全保障(Energy Security)、環境対策(Environmental Protection)、経済効率性(Economic Efficiency)という、3E実現の切り札を得たことになります。また、天然ガスをLNGとして輸入する国は、現在の原油価格連動のLNGより安い価格で調達できる手段を手にすることになります。>

そう著者が指摘するように、当初、シェール開発に及び腰だったEUも、ロシアからの天然ガス輸入の低減や地球環境問題への対応、米国の産業競争力への対抗を考え、シェール開発に舵を切りつつある。

一方、「アラブの春」やシェール革命による経済不安に加え、イランの核開発問題を抱えた中東では、地政学リスクが増している。そんななか、中国は積極的に資源確保に乗り出している。アジア太平洋地域へ軍事・外交の重心を移す米国の「リバランス政策」ともあわせ、シェール革命は「風が吹けば桶屋が儲かる」式に、日本の安全保障政策のあり方にも波紋を広げているといえそうだ。

日本は波にうまく乗れるのか
シェール革命を契機に国際情勢がガラガラと音を立てて変わりつつあるなか、日本だけが、東日本大震災と福島事故以降のエネルギー政策の混乱から抜け出せずにいる。まるで時が止まったかのようだ。

世界の動きに遅れをとるどころか、準国産エネルギーである原子力発電の再稼動もままならず、「アジアプレミアム」と呼ばれる割高な価格でLNGを大量に輸入している。海外への燃料費の流出は、原子力発電所代替分だけで年間3兆6000億円に上る。

著者はこうした状況を憂え、「日本で高まる期待と現実」「日本の針路」という最後の二章を割いて、日本のエネルギー政策のあり方を説く。

このまま電力の供給不安と電気料金の上昇が続けば、「アベノミクスの第3の矢である成長戦略にとって障害になりかねません。産業の空洞化がさらに進み、雇用が失われる」と懸念をあらわにしている。

<その一方で、シェール革命は米国の産業競争力を回復させるのに大いに貢献しています。特に安い原料を使えるようになった石油化学産業は、飛躍的に国際競争力を高めています。すべてのもの作りに必要不可欠なエネルギーと石油化学原料が安く供給できるようになり、米国製造業の生産コストが大幅に下がっています。EUはこれに強い危機感を持っていますが、日本も同じ状況だと認識すべきだと思います。>

<現在の日本にとって、電力不足を改善し電気料金の上昇を抑え、成長戦略を支えることができる即効性のある対策は、LNG価格フォーミュラの見直しとともに、安全が確認された原子力発電所を再稼動させることです。>

著者の意見に全く同感である。

20世紀が「石油の時代」と呼ばれたように、21世紀は「天然ガスの時代」になるだろう。「シェール革命」の大波が世界を洗おうとしている今、日本は波にうまく乗れるのか、それとも波にのまれ、沈没するのか。

“世紀のエネルギー転換期”のいま、とるべき針路をしっかり見極めなければ、資源のないわが国に光あふれる未来はないだろう。

東嶋和子


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